Tektome Platform に適用し、図面からレイアウト情報を自動抽出・データベース化を実現
建設業界において、従来の 2D 図面を解析しデータ化することは長年の課題とされてきました。とりわけ AI にとっては、複雑な寸法線や空間をまたいだ注記の干渉、スキャン時の歪みや手書き修正といった要因により、誤認識が生じやすく、極めて困難な領域でした。さらに、建具の特殊記号や組織・担当者ごとの作図ルールの違いも、解析精度を阻む要因となっていました。
テクトムではこれらの課題を解決するため、AI による 2D 図面解析の実用化を目指し、「 平面図解析技術 」を開発しました。
建築設計において、平面図は空間構成や動線計画、機能配置といった建築の根幹を規定する最も本質的な図面です。これらの情報を解析することで、構成や配置に基づく図面検索や、設計傾向の統計分析など、多様な応用が可能となります。
技術解説|AI が平面図からレイアウト情報を高精度に抽出
克服した主な課題
- 寸法線や線表現の多様性:壁線・部屋境界線と寸法補助線が重なることによる誤認識を解決。線の太さ・破線・点線なども正確に判別。
- 図面のノイズやバリエーション:スキャン歪み、解像度不足、印刷かすれ、手書き修正、設計事務所ごとの作図ルールの違いにも対応。
- 注記や文字の干渉:「 浴室 」「 EPS 」などラベルが空間をまたいでも、正しく判定。
本技術で実現したこと
- 部屋の寸法・形状の抽出:縮尺が異なる図面でもスケールを読み取り、寸法・形状を正確に測定可能。
- 室名や室用途の推論:開口や扉で途切れて完全に囲まれていない空間も、AI が「 一部屋 」として認識。
- 建具(ドア・窓)の特殊表現解析:開き戸の円弧や引き戸の矢印などの建具記号を理解し、面積や開口部を正しく計算。
この技術により、平面図から室名・室床面積・室容積などを AI が解析し、設計に活用できるデータとして自動的に構造化します。
< 図面解析結果のイメージ図 >

期待される活用シーン|平面図データを活かした検索・分析・設計支援
本技術の導入により、平面図情報のデータベース化を実現し、一元的に整理・活用できるようになりました。
平面図には、室名や仕様、数量などの文字・数値情報に加え、線や寸法・配置・面積といった形状情報も含まれています。本技術ではこれらの情報を AI が解析し、部屋の配置や用途の分布、面積効率など、建築計画に直結する情報を幅広く自動抽出します。その結果、新規計画の効率化や統計データに基づく意思決定、設計レビューの省力化、積算の自動化などを実現します。
【 主な活用例 】
- アーカイブ検索
- 文字・テキストベースのみでなく図面から室面積や寸法などの形状情報が解析できるようになり、「 500㎡以上あるホール 」、「 奥行き15m以上のオフィス専有部 」など空間の特徴を用いた高度な検索
- 統計分析
- 「 小学校の柱スパン 」、「 貸室の天井高さ 」、「 レンタブル比 」など、室床面積や形状情報の取得が可能となり、竣工プロジェクトの統計・傾向分析を行い、現行の設計に活用
- 自動チェック
- 「 平均天井高さ2.1m以上 」、「 避難における歩行距離30m以下 」など、建築関連法令や設計基準への適合性を自動判定
- 自動設計
- 「 教室の形状は7mx9mが多い 」、「 都内の1万㎡規模のオフィスビルは貸室の奥行き約14−16m程度が多い 」など、部屋の形状や寸法を AI が学習し、レイアウト案を自動生成
AIが解析・構造化したデータは「 KnowledgeBuilder 」に蓄積され、設計事例の検索や設計傾向の把握、AI による学習・自動設計に活用されます。さらには、ReqManager や SmartCheck では要件管理・基準チェックに利用でき、Tektome Platform 全体で高度な連携が可能になります。
< KnowledgeBuilder の活用イメージ >

今回の平面図解析技術を皮切りに、断面図・立面図・設備図など、2D 図面への対応を順次拡大していきます。
さらにその先には、BIM データへの応用も視野に入れ、将来的に設計から施工・維持管理まで、各プロセスでのデータ活用を実現していきます。
テストユーザー募集について
本技術の実用化をさらに推進するため、テクトムでは実際の設計業務でお試しいただけるテストユーザーを募集しています。
【募集要項】
対象:建築設計事務所、ゼネコン、不動産開発会社など、建築図面を扱う事業者様
応募方法:ご興味のある方は、以下のボタンよりお申し込みください。
