パリの Release[AEC] で広がる新たな発想
11月17日にパリで開催されたRelease[AEC] 2025は、AEC業界の未来を形づくるデジタル技術やAIイノベーションに光を当てる、新しいカンファレンスです。スタートアップによるデモ、テクノロジーショーケース、そしてキーノート講演が次々と披露され、AEC業界にとって最新情報の発信地となりました。

テクトムのグローバルチームにとっても非常に刺激的な1日で、スタートアップから業界のベテランまで多様な方々と交流し、テクノロジーがどのようにAECワークフローの加速に貢献できるかについて意見を交わしました。
特に印象深かったのはキーノート講演です。Allister Lewis 氏(ADDD CEO)は、複数のAIツールを組み合わせることで設計・施工プロセスを高速化できることを実演し、Tim Fu 氏(Studio Tim Fu 創業者)は、建築におけるビジュアルストーリーテリングを支える「AIプロンプト活用」の可能性を語り、多くの関心を集めていました。

また、テクトムは製品を体験できる自社デモブースを設置し、多くの方にご訪問いただきました。これによりフランスおよび欧州のAECスタートアップの状況、そして欧州全体で顕在化している課題について、多くの新たな気づきを得ることができました。
ロンドンの London Build Expo に見るAIの存在感
次の目的地はロンドンのLondon Build Expo。イギリス最大級の建設展示会で、毎年数万人が参加する大規模イベントです。2日間にわたり、巨大インフラプロジェクトや最新の建設テクノロジーなど、幅広い展示が行われました。
賑わう会場の中でも、特に注目を集めていたプレゼンテーションがいくつかありました。
Zaha Hadid Architectsの代表は、同社がどのようにAIを活用して設計プロセスを強化しているかを紹介し、デザインツールが新たな建築設計を生み出す様子を披露していました。またHeatherwick、KPF、Grimshaw、OMAなどの大手設計事務所も、2026年に注目すべきトレンドやテクノロジーについてのセッションを実施していました。
世界的な設計事務所がAIを活用したワークフローを語る姿は非常に象徴的で、世界のトップ建築家たちがAIツールを積極的に受け入れていることが明らかになりました。
Thinkproject Live London で見えたデータ活用の未来
ロンドンでのもう一つのイベントは、建設分野のデータ連携とAIをテーマとしたThinkproject Live 2025。このカンファレンスでは、デジタルトランスフォーメーションに関する講演やワークショップが行われ、より内容の深いディスカッションが展開されました。
ここでは業界が直面する「データの断片化」という課題に改めて向き合う機会となりました。
キーメッセージは、データ連携こそがAECのワークフローを根本から加速させ、AIによる高度な意思決定や自動化を可能にする鍵であるということでした。
ThinkprojectのCEOは、初期のプロジェクト管理ツールから、現在のデータドリブンなプラットフォームへと業界が進化してきた歴史を振り返りながら、AIが建設ソフトウェアのアセットライフサイクル全体において「変革をもたらす存在」になりつつあると強調しました。
このイベントを通じて、AEC分野におけるデータ連携の重要性と可能性を改めて感じることができました。
業界との新たなつながりと未来への展望
展示会の合間には、パリとロンドンで複数の設計事務所やAEC企業と個別ミーティングを行い、これらの対話はイベントと同じくらい貴重な学びとなりました。
設計者や経営層とのディスカッションでは、彼らが日々直面する課題やAIソリューションに求めるものを率直に聞くことができました。多くの方々がテクトムのAIソリューションの価値を即座に理解し、具体的に「どの業務で役立つか」を指摘してくださったことは大きな後押しです。
これらのフィードバックは、今後のプロジェクトやパートナーシップにつながる可能性を大きく広げてくれました。
AECにおけるAIの現在地
1週間のイベントを通じて、AEC分野のAIは、今まさに分岐点にあるということが明確に浮かび上がりました。
現在注目を集めているAIツールは、デザインのビジュアル面に特化したものが中心で、レンダリング生成や新しいファサード、パターン生成などが代表例です。これは重要な進歩ですが、AECのすべてではありません。
BIMが掲げていた「プロジェクト情報の一元化」という理想は、いまだ完全には実現していません。BIM活用を推進する企業であっても、業務全体をカバーするには複数のソフトウェアを組み合わせる必要があります。
しかし、AIが台頭する現在、テクトムはこれらのツールを置き換えるのではなく、つなぎ合わせるチャンスが訪れていると感じています。AECは非常に複雑で、すべてを1つの巨大なAIやソフトウェアで実現するのは現実的ではありません。
むしろ、法令・条例チェックやレイアウト設計、積算など特定領域に強いAIアシスタントが、連携しながら動く未来が現実味を帯びています。
これはまさに、テクトムが目指す方向性そのもので、特化型AIを相互連携させ、まとめて活用できる形にすることにより、1つの統合ワークフローとして機能させています。
今回のイベントを通じて、AIがAECにもたらす可能性は大きく、ツールやデータをつなぐことで、BIMが長年掲げてきた効率化の理想に業界を一歩近づけられる未来が見えました。
次のステップへ:この勢いを未来へつなぐ
パリとロンドンでの1週間を終え、次の展開に向けて大きな活力と期待を感じました。
これらのイベントを通じて、多くの方にソリューションを体験いただき、直接フィードバックを得られたことは大きな財産です。
今後は、今回得た学びを製品ロードマップに反映しつつ、AEC業界との関わりをさらに深めていきます。
AIがAEC業界にもたらす旅路は、私たち全員が共に歩むものです。そして今回の経験を通じて、テクトムはこれまで以上にその旅をリードし、建築・エンジニアリングの未来をよりスマートに、迅速に、クリエイティブにする支援ができると確信しています。