AEC業界はこれまで「デジタル化が遅れている業界」と見なされてきました。建設会社や設計者は紙の図面を手に作業し、他業界が新しいアプリやガジェットで先行する中で、取り残されているように語られることも少なくありませんでした。しかし、この構図は急速に変わりつつあります。
Deloitteの分析によれば、建設会社が使用するデジタル技術の平均数は、前年の5.3から6.2へ増加しており、約20%の伸びとなっています。AEC業界でもハイテク化が着実に進み、業界全体が新たなデジタルツールの波を受け入れ始めていることがうかがえます。
AEC業界におけるデジタル導入の実証効果
このテクノロジー導入の加速は単なる流行ではなく、現場で明確な成果を生み始めています。Deloitteによると、より多くのデジタルツールを導入している企業ほど、現場の安全事故が減少し、施工品質が向上し、工程面でも改善が見られると報告されています。
注目すべきは、導入するデジタルツールが1つ増えるごとに、売上が約1.14%増加する相関が示されている点です。一見小さな数字に見えますが、例えば売上1億円規模の建設会社であれば、1つのデジタルソリューション追加で約114万円の増収に相当します。
デジタル化は単なるテクノロジートレンドではなく、安全性と収益性の両面を押し上げる経営要素になりつつあるのです。
加速するデジタル化、その裏で浮かび上がる課題
しかし、この急速なデジタル化には落とし穴もあります。多くの企業では、相互に連携しないソフトウェアやシステムが増え続け、それらが十分に噛み合っていないのが実情です。
Deloitteによると、建設会社は平均して11種類もの異なるプラットフォームやデータ環境を横断して情報を扱っています。プロジェクト計画、法令対応書類、協力会社情報などが別々のシステムに分かれている状況は珍しくありません。こうした分断されたデータサイロは、現場にとって大きな負担になります。
結果として、複数のアプリを行き来しながら情報を探したり、データを重複入力したりする時間が発生します。多くの企業が、情報分断による追加の教育コストや運用上の非効率を報告しており、これはデジタル時代特有の新たな課題と言えるでしょう。
分断された情報をどう統合するか
AEC企業にとって次の大きな課題は、増え続けるツールによって拡大した情報の分断をどう乗り越えるかという点です。テクノロジーを導入すればするほど、データは各システムに分散し、連携がなければ新たな非効率を生みかねません。
だからこそ重要なのが、増え続けるツール群を「調和させて機能させる」ことです。導入はスタートにすぎず、真の成果は統合によって生まれます。これは、いわゆる「Single Source of Truth(単一の正しい情報源)」を構築する発想です。
例えば、最新のBIMモデルを開き、それを関連法規と照合し、さらに類似案件の知見を参照するといったことを、複数ソフトを行き来せずに実現できる状態です。要件情報、設計ファイル、組織のナレッジなどを統合するプラットフォームがあれば、重複作業を排除でき、全員が同じ情報に基づいて動けるようになります。これは、雑然とした工具箱から、整然と整理された作業台へ移行するようなものです。
AECナレッジを統合するアプローチ
分断された情報環境を解消する鍵は、既存の情報を横断的に統合し、「Single Source of Truth(単一の正しい情報源)」を確立することです。CAD図面やBIMモデル、PDF、現場写真、要件情報など、形式も保存場所も異なるデータを、検索・参照可能な形で結びつけることができれば、情報は単なる記録から「活用可能なナレッジ」へと変わります。
設計者やエンジニアが複数のシステムを行き来せずに必要な情報へアクセスできれば、重複作業や確認漏れは減少します。過去の意思決定や教訓を横断的に参照できる環境は、意思決定の質そのものを高めます。
重要なのは、個別のツールの性能ではなく、それらをどう接続し、意味で統合するかです。増え続けるデジタルツール群を一貫した仕組みとして機能させることこそが、次の競争力を左右します。
デジタル導入が加速する今こそ、「点」を増やすのではなく、「点と点をつなぐ」発想への転換が求められています。成功するAEC企業とは、導入済みの技術群を統合された基盤として活かし、安全性・品質・効率の向上へと結び付けられる企業です。
Tektomeでは、こうした統合アプローチを支援する仕組みを提供しています。
既存のプロジェクトデータやドキュメントを横断的に整理・参照できる環境を整えることで、分断された情報を実務に活かせる形へとつなげます。
具体的な機能やアプローチの詳細については、製品ページで紹介しています。
