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建設プロジェクトを遅らせるシステム乱立|データサイロが生む非効率

昨今のAEC業界では、ソフトウェアやツールの乱立により、建設プロジェクトの情報が複数のシステムに分散し、重要データにすぐアクセスできない状態が生まれています。こうした「システム乱立」が引き起こすデータサイロは、検索にかかる時間を増やし、手戻りや意思決定の遅れを招きます。その結果、時間とコストが浪費され、管理者が情報を探すだけで数日単位の工数を失うケースも珍しくありません。本記事では、建設プロジェクトを遅らせる根本原因としてのシステム乱立とデータサイロ問題を整理し、それを解決するための「統合」というアプローチを解説します。

2025.10.16

こんな状況に心当たりはないでしょうか。

ある日、構造図の特定のディテールを確認しようとして仕事を始めます。
まずプロジェクトのクラウドストレージを確認しますが、最新版が見当たりません。担当チームにメールを送ると、別のサーバーを参照するよう案内されます。その一方で、プロジェクトマネージャーは3週間前のオンライン会議で出た施主要望を追いかけ、積算担当者は会計ソフトと整合しないスプレッドシートの数字に頭を抱えています。

こうした「情報探しの混乱」は、単なる不便さではありません。
多くの担当者が、重要なプロジェクトデータが無数のソフトウェア、サーバー、ストレージに分断された「システムの断片化」という構造的な問題に直面しています。このデジタル上の混乱は、プロジェクトの進行を確実に遅らせ、利益を圧迫します。

システム乱立が生むデータサイロの実態

この問題は、想像以上に根深いものです。Deloitteの最近の調査によると、2025年時点で一般的な建設会社は、中央値で11種類の異なるデータ環境を使ってプロジェクトを管理しています。これは図面、要件、予算、工程表といった重要情報が、相互に連携しない複数の場所に存在している状況とも言えます。

こうした状態は「データサイロ」を生み出します。
設計・エンジニアリング・調達・施工といった各チームが、それぞれ独立した情報の島で業務を行うことになります。業界ライターのStephen White氏は、次のように指摘しています。

分断されたデータは、建設プロジェクトの遅延や手戻りを引き起こす最も一般的な原因のひとつである。
異なるツールや古い文書管理手法に依存すると、情報のサイロ化が進み、コミュニケーションや意思決定に大きな断絶が生まれる。

情報がスムーズに流れなければ、協業は成り立たず、プロジェクト全体に悪影響を及ぼします。

データサイロが引き起こす時間損失と手戻り

複数システムを行き来しながら情報を探す時間は膨大で、管理職は週に最大1.5日をプロジェクトデータの検索に費やしているともされています。実に、労働時間の4分の1以上が、本来の業務に入る前に失われているのです。その影響はプロジェクト全体に波及し、情報が散在している状況では、すでに存在する資料や計算を再作成する二度手間が発生する可能性も高まります。

さらに深刻なのは、不完全または古いデータに基づいて意思決定が行われてしまう点です。これがエラーや認識齟齬、そして高コストな手戻りにつながります。実際、建設業界における手戻りの52%は、不十分なプロジェクトデータとコミュニケーション不全が原因だとされています。

この問題は、設計ソフトを扱う場面で特に顕著になります。例えばRevitを使った業務では、バージョンの違いが大きな障害になりえます。意匠担当がRevit 2024で作成したモデルを、構造担当がRevit 2020を使っている場合、そのままではモデルを開くことすらできません。古いモデルを新しいバージョンで開くことは可能ですが、モデルの規模によっては更新処理に30分以上かかることもあります。こうした技術的な障壁も、必要な情報へアクセスできない状況を生み、プロジェクト全体の遅延要因になっていきます。

システム乱立を解消する「情報の一元化」

この混乱を解消する鍵は、データサイロを解体し、データをひとつの統合された基盤に集約することです。
これにより、「Single Source of Truth(単一の正しい情報源)」が実現します。すべての関係者が同じ最新情報にアクセスできる状態です。

AutodeskのCEO Andrew Anagnost氏は次のように述べています。

データを業務の中心に据えるべきだ。なぜなら、データこそが最も価値ある資産、すなわち知的財産であり、アイデアそのものだからだ。

データを中核資産として一元管理することで、すべての判断が、完全で正確かつ最新の情報に基づいて行われるようになります。

分断をなくす「統合基盤」という発想

分断されたシステム環境を解消するためには、個別のツールをさらに増やすことではなく、情報同士を横断的につなぐ「統合基盤」という発想が必要になります。

ここでいう統合基盤とは、図面・要件・議事録・予算・報告書など、プロジェクトに関わるあらゆる情報を、ひとつの基盤上で意味で結びつけて整理できる状態を指します。重要なのは、ファイルを同じ場所に置くことではありません。情報同士の関係性が可視化され、誰もが同じ最新情報にアクセスできることです。

例えば、

  • 要件変更が、どの図面に影響するのか
  • 過去の不具合が、どのディテールと関係しているのか
  • 施主要望が、どの設計判断につながっているのか

こうした関係性が可視化されていれば、チーム間の断絶は大きく減少します。

さらに、情報が構造化されていれば、必ずしも特定のネイティブソフトや同一バージョン環境に依存しなくても、必要な内容にアクセスできる可能性が広がります。これは単なる利便性の向上ではありません。意思決定の質そのものを底上げする基盤づくりです。

分断から統合へ

多すぎるシステムに依存し続ける働き方は、もはや持続可能とは言えません。遅延や手戻り、生産性の低下は、静かにプロジェクトの効率と収益性を蝕んでいきます。

求められているのは、新しいツールを増やすことではなく、分断された情報をどう結び直すかという視点です。情報がひとつの基盤で整理され、誰もが同じ最新データにアクセスできる状態が整えば、意思決定はより迅速かつ正確になります。要件は追跡可能になり、過去の教訓は組織に蓄積され、重要な知見が埋もれることも少なくなります。

分断から統合へ。それは単なる効率化ではなく、プロジェクト全体の透明性と信頼性を高めるための基盤づくりです。


Tektomeでは、こうした「統合基盤」という考え方をもとに、プロジェクト情報の一元管理と構造化を支援する仕組みを提供しています。

・図面や報告書などの非構造データを整理・検索可能にする KnowledgeBuilder
・プロジェクト要件を一元管理し、追跡可能にする ReqManager

詳しいアプローチや機能については、製品ページをご覧ください。

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