建築設計者として約10年間、建物の構想から完成まで、プロジェクトのさまざまな段階に携わってきた加藤雅大。現在はTektomeでArchitectural Solution Leadを務め、建築設計の経験を活かしながら、AIによる建設業界の課題解決に取り組んでいます。
設計実務を続ける中で感じるようになったのは、設計者が本来向き合いたい設計の仕事に、十分な時間を使えていないという課題でした。
なぜ長年勤めた設計事務所を離れ、Tektomeへ加わったのか。設計者として感じていた課題、Tektomeとの出会い、現在の仕事、そしてAIが設計者にもたらす可能性について聞きました。
話し手:加藤 雅大(Architectural Solution Lead)
聞き手:Quinn Borders(Talent Acquisition Specialist)
設計者としての10年間で感じた、設計現場の課題
Tektomeに入社する前は、どのような仕事をしていたのでしょうか?
Tektomeに入社する前は、日建設計で約10年間、建築設計の仕事をしていました。
キャリアの早い段階で、小規模なプロジェクトを最初から最後まで担当する機会に恵まれました。最初の構想から設計を進め、実際に建物が完成するところまで見届けられたことは、設計者として非常に貴重な経験だったと思います。
一つのプロジェクトを通して経験することで、設計がどのように進み、どの段階で問題が起こりやすいのかを幅広く理解できました。若いうちにプロジェクト全体を経験できる設計者は、それほど多くないかもしれません。
設計者として働く中で、どのような課題を感じていましたか?
設計者を目指したのは、設計を通じて世の中をより良くしたいと思ったからです。
ただ、実際に働き続ける中で、設計そのものよりも、お客様との打ち合わせやプロジェクト管理、関係者との調整に使う時間が徐々に増えていきました。
もちろん、設計者には設計以外にも多くの役割があります。自分たちは特徴のある建物を設計したいと思っていても、プロジェクトには予算やスケジュール、事業性といったさまざまな条件があります。それらを調整する中で、当初のアイデアが少しずつ現実的な案へ変わっていくこともあります。
新型コロナウイルスの流行以降は、より大規模な商業施設のプロジェクトに携わるようになり、関係者も増え、プロジェクト期間も長くなりました。
その結果、設計よりも管理や調整に使う時間がさらに増え、自分が本来取り組みたかった、価値を生み出す仕事から少しずつ離れている感覚がありました。
転職を考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
ずっと考えていたのは、「どうすれば、もっと効率化できるのだろう」ということでした。
設計以外の業務に多くの時間がかかっている状況を、何か別の方法で改善できないか。その問いが、すべての始まりだったと思います。
答えを探してオンラインで情報を調べる中で、建築分野の経験者を募集していたIncubitを知り、まずはカジュアル面談で話を聞くことになりました。
設計者としての経験を、Tektomeで次の挑戦へ
Tektomeとの最初の出会いでは、どのような印象を持ちましたか?
最初の面談で驚いたのは、自分が建築設計の現場で感じていた課題を、創業者の北村がすでに建設業界全体の問題として捉えていたことです。
特に共感したのが、設計者は非常に忙しく、業務を効率化するための新しいソフトウェアがあっても、それを学ぶ時間を確保できないという問題でした。
新しいツールを導入した方がよいと分かっていても、覚える時間がないため、結局はAutoCADなど使い慣れた方法へ戻ってしまう。業務を改善するためのツールが、導入の負担によって使われなくなってしまうことがあります。
これは、私自身も現場で強く感じていたことでした。
入社を決めた理由は何でしたか?
最初の面談から約4か月後、Tektomeに入社しました。当時のチームはまだ5人ほどで、事業も構想段階に近い状態でした。
すでにストレージに関する初期的な概念実証はありましたが、現在のような製品が完成していたわけではありません。
それでも入社を決めた大きな理由は、チームのスピードです。意思決定が早く、考えたことをすぐに試せる。その環境に魅力を感じました。
一方で、入社後にはカルチャーの違いも感じました。建築設計では、時間をかけて品質を高め、完成度を追求します。Tektomeでは、まず試し、フィードバックを得ながら素早く改善していきます。
最初はその違いに戸惑いましたが、次第に、このスピード感こそ自分が求めていたものだと感じるようになりました。
現在は、Tektomeでどのような仕事をしていますか?
現在はArchitectural Solution Leadとして、建築設計の経験を活かしながら、製品やソリューションづくり、顧客との対話に関わっています。
Tektomeで働く魅力は、大きく3つあります。
一つ目は、チームがグローバルな視点を持ち、柔軟かつ実践的に仕事を進めていることです。
二つ目は、世界各地の設計会社と接し、それぞれの会社がどのような業務フローで仕事をしているのかを学べることです。
そして三つ目は、自分と同じような経験や課題意識を持つお客様と話せることです。
お客様が話す悩みの多くは、私自身も設計者として経験してきました。同じ背景を持っているからこそ、課題の本質をすぐに理解でき、より深い話ができると感じています。
現在は英国を拠点に活動していますね。
以前から、海外で働き、より広い市場に挑戦したいと考えていました。1年以上にわたって移住を検討し、現在は英国を拠点に活動しています。
ロンドンでSolutions Architectを務めるHenry Turnerがチームに加わったことも、新しい環境への適応を後押ししてくれました。
英国をはじめ、世界各地の建築設計や働き方に触れられることは、自分にとって大きな学びになっています。
AIは設計士を置き換えるのではなく、力を与える
建設業界では、AIが仕事を奪うのではないかという不安もあります。加藤さんはどう考えていますか?
私は、AIが設計者を置き換えるとは考えていません。
重要なのは、限られた人数と時間の中で、設計者がより大きな価値を生み出すために、AIがどう支援できるかだと思います。そこにAIの価値があります。
これまでのAIは、一つの質問に対して一つの回答を返すような、単発の利用が中心でした。
現在は、プロジェクトの中で生まれた知識を蓄積し、なぜそのような判断が行われたのかという背景まで理解しながら、プロジェクト全体の文脈を保持できる方向へ進んでいます。
毎回ゼロから始めるのではなく、これまでの経験を踏まえて次の仕事を支援できるようになる。これは、建設業界にとって非常に大きな変化だと思います。
特に、建設業界ではどのような領域でAIが役立つと考えていますか?
建設業界には、明確な正解を一つに決められない場面が多くあります。
例えば同じ法規を読んでも、設計者によって解釈が異なることがあります。法規の文章だけを読めばすべて分かるわけではなく、過去の案件や行政との協議、社内で蓄積されてきた知識を踏まえて判断することも少なくありません。
そうした知識は、ルールブックではなく、企業や人の中に蓄積されています。
AIが企業独自の経験や知識を学び、業務の中で活用できるようになれば、その企業に固有のAIをつくることができます。
一般に販売されているツールを導入するだけでは、競合企業と同じものしか使えません。しかし、自社が蓄積してきた知識や経験をAIで活用できれば、それ自体が企業独自の強みになります。
深い業界経験と、急速に進化するテクノロジーをつなぐ
最後に、Tektomeで今後挑戦していきたいことを教えてください。
設計者として10年間働いた経験があるからこそ、設計の現場で何が課題になっているのかを理解できます。
一方で、AIをはじめとするテクノロジーは非常に速いスピードで進化しています。
私がTektomeで取り組みたいのは、建設業界で培われてきた深い実務経験と、急速に進化するテクノロジーをつなぐことです。
設計者が調整や確認作業だけに追われるのではなく、本来向き合いたかった設計や、より価値のある仕事に時間を使えるようにしたいと思っています。
自分が設計者として感じていた課題と同じものを抱えている方に、Tektomeの取り組みを知っていただき、一緒に建設業界の新しい働き方をつくっていけたらうれしいです。
Tektomeで、建設業界の新しい働き方をつくる
Tektomeでは、建築・建設分野で培った専門性と、AIをはじめとするテクノロジーを組み合わせ、業界の課題解決に取り組むメンバーを募集しています。
キャリアや考え方に共感された方、業界で培った経験を新しい技術と結びつけたい方は、ぜひ募集中のポジションをご覧ください。
