なぜBIMモデルチェックは手作業のままなのか

現在のBIMモデルチェックは、多くのプロジェクトで依然として手作業に依存しています。この方法は長年使われてきましたが、プロジェクトの複雑化や設計変更の増加により、さまざまな課題が顕在化しています。

代表的な問題として、次のような点が挙げられます。

  • 作業時間と人的負担|手作業による法規チェックは時間とコストがかかり、ミスも起こりやすくなります
  • 人為的ミスが発生しやすい|チェック作業を人が担う以上、ミスは避けられません。作業が長時間に及べば疲労が蓄積し、細かな条件を見落としたり、仕様書の解釈を誤ることもあります

  • 設計変更への対応が追いつかない|建設プロジェクトでは設計変更が頻繁に発生します。変更があるたびに、モデル全体を手作業で再チェックするのは非常に負担が大きく、どこを再確認すべきか把握するだけでも混乱が生じます

  • 判断や解釈のばらつき|建築関連法令や設計基準は非常に複雑で、解釈の余地があります。そのためある担当者は問題と判断する、別の担当者は問題なしと判断するいった判断のばらつきが生じる可能性があります
  • 大規模プロジェクトへの拡張性|BIMは大規模で複雑な建築プロジェクトを扱うための技術ですが、手作業による品質チェックはその規模に対応できません。病院、空港ターミナル、都市再開発といったプロジェクトでは、数百万のBIM要素が含まれます。これを人の手だけで検証するには、膨大な時間と専門家が必要になります
  • 個人の専門知識への依存|モデルチェックの過程で、多くの場合各分野の専門家に問い合わせる形で進められます。経験豊富なBIMマネージャーや法規専門家がいれば対応できますが、この方法ではチームごとに品質がばらつく、ナレッジが属人化するといった問題が発生します
  • 既存ツールによる支援の限界|干渉チェックや仕様書との整合チェックなどを自動化するツールは存在しますが、多くの場合、ツールの設定が複雑かつ専門的なスキルが必要であり、導入ハードルが高いといった課題があります

このように、現在のBIMモデルチェックの方法は、時間・コスト・品質のすべての面で改善の余地が大きい状態にあります。こうした課題を解決する手段として、近年注目されているのがAIによるモデルチェックの自動化です。

AIによるBIMモデルチェック自動化

近年、BIMソフトウェアやAI技術の進展により、モデルチェックの自動化に向けた取り組みが進んでいます。従来は人の目で確認していた法規適合性や要件チェックの一部を、AIやコンピュータが自動的に検証できる環境が整いつつあります。

AI-assisted BIM compliance checking - automation helps catch issues in the model so humans don't have to.

このアプローチでは、チェック作業の多くをAIやコンピュータが処理し、人は結果の確認や判断に集中する形になります。つまり、機械が反復的な検証作業を担い、人は設計判断や例外ケースの対応に注力するという役割分担です。

自動化による効果は大きく、例えば次のような変化が期待できます。

  • チェック結果の一貫性
    ルールが同じであれば、誰が実行しても同じ結果が得られます。担当者による判断のばらつきが減少します。

  • 設計判断への集中
    AIが明確なルール違反を検出することで、人は解釈が必要な部分や設計判断に集中できます。

  • 大規模モデルへの対応
    BIMモデルに含まれる要素が数百でも数十万でも、コンピュータにとっては同じ処理です。モデルの規模がチェック作業の障害になりにくくなります。

こうした技術はすでに研究・開発が進んでおり、Automated Code Compliance(ACC)と呼ばれる分野として注目されています。実際に一部の国では、BIMモデルを建築規制と自動照合する電子申請(e-permitting)の実証も進められています。

この流れは、BIMモデルチェックを手作業中心のプロセスから、自動検証を組み合わせたワークフローへ発展させる可能性を示しています。

具体例:AIによるBIMモデルチェックのイメージ

実際のプロジェクトを例に、こうした自動チェックがどのように機能するのかを見てみます。

例えば病院の建設プロジェクトで、EPS(電気シャフト)周辺の部屋に水を使った清掃が想定される空間がないか確認する必要があるとします。

従来であれば、BIMモデルを開き、EPS周辺の部屋を特定し、それぞれの用途や仕上げ仕様を確認しながら、水を使用する可能性がある空間かどうかを判断する必要があります。こうした確認作業は、BIMモデルが大規模になるほど時間がかかります。特に複数フロアにまたがるプロジェクトでは、関連する情報を横断的に確認するだけでも大きな負担になります。

AIによるモデルチェックでは、このような確認をより効率的に行うことができます。

  1. AIがBIMモデルを読み取り、EPS周辺の部屋を自動で抽出する

  2. 室名、用途、仕上げなどの情報を横断的に分析する

  3. 水清掃が想定される空間を候補として提示する

その結果、該当する部屋とEPSとの位置関係や関連する条件をまとめた結果を短時間で確認できます。

このような仕組みがあれば、設計者やQA担当者は図面やモデルを手作業で追いかける時間を減らし、問題の判断や設計調整により多くの時間を使えるようになります。

BIMモデルチェックは次の段階へ

手作業によるBIMモデルチェックには、時間・コスト・品質の面で多くの課題があります。プロジェクトの複雑化や設計変更の増加により、従来の方法だけでは対応が難しくなりつつあります。

AIを活用したモデルチェックは、この状況を改善する可能性があります。コンピュータが反復的な検証作業を担うことで、人は設計判断や例外ケースの検討に集中できるようになります。

また近年では、BIMモデルに対して確認したい条件やルールをAIに指定することで、自動的にチェックを実行できる技術の研究・開発も進んでいます。
こうした仕組みが実用化され、モデルチェックはより高度に自動化されたワークフローへと進化しつつあります。


本記事で紹介したようなBIMモデルチェックの自動化に向けた取り組みは、現在さまざまな研究やツール開発が進められています。Tektomeでも、AIを活用したBIMモデルチェックツール「SmartCheck」の開発を進めています。

下の動画では、SmartCheckによるBIMモデルチェックのデモをご覧いただけます。
AIがモデル内の情報を解析し、指定した条件に基づいてチェック結果を整理することで、設計者やQA担当者が確認すべきポイントを効率的に把握できるようになります。

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