素粒子物理学の研究者としてCERN(欧州原子核研究機構)の実験に参加し、ディープラーニングを物理研究へ取り入れる研究に取り組んできたGiles Strong。現在はTektomeでSenior AI Research Engineerを務め、建設業界向けのAIエージェント開発に取り組んでいます。
子どもの頃からの目標だった研究の道から、産業分野へ。その転身は、どのように決まったのでしょうか。
これまでのキャリア、Tektomeへの入社理由、エンジニアが一貫して製品づくりを担う開発環境、そしてAIの進化がもたらす建設業界の可能性について聞きました。

エンジニアチームSenior AI Research Engineer
Giles Strong
素粒子物理学の研究から、AIを活用した最適化へ
まず、これまでのキャリアについて教えてください。
子どもの頃から量子物理学の研究者になりたいと思っていました。CERNにも子どもの頃に何度か訪れたことがあり、いつかそこで働きたいと考えていたんです。
大学では理論物理学を学び、その後、大学院で実験素粒子物理学を専攻しました。そこからCERNのATLAS実験に参加し、研究に携わるようになりました。
ただ、私が主に取り組んでいたのは、粒子の衝突データそのものの解析というより、その解析を支えるコンピューティングの領域でした。
AIやディープラーニングの研究に進んだきっかけは何だったのでしょうか?
その後、博士号を取得するためにリスボンへ移り、CERNのCMS実験に関わりながら、素粒子物理学にディープラーニングを取り入れる研究を始めました。
当時は、素粒子物理学の分野でもニューラルネットワークの活用が本格的に模索され始めた時期でした。
研究の目的は、ディープラーニングを素粒子物理学の研究にどのように組み込めるかを明らかにすることです。言葉にするとシンプルですが、実現するのは簡単ではありません。
博士課程では、ヨーロッパ各地の10人の博士研究者が参加する研究ネットワークにも所属していました。それぞれに産業界のパートナーがついており、私の場合はモスクワで3か月間、一般の人々が科学研究に参加するシチズンサイエンスのデータコンペティション向けプラットフォームの開発に携わりました。
博士号取得後は、研究ネットワークのコーディネーターから声をかけてもらい、イタリアのパドヴァでポスドク研究員として働くことになりました。
その後は、どのような研究に取り組んでいたのでしょうか?
素粒子の衝突を観測する検出器は、設計から建設まで数十年かかることもある非常に複雑な装置です。その設計には、長年の経験に基づく経験則が数多く使われています。
私が取り組みたかったのは、こうした設計をソフトウェアによって最適化することでした。
具体的には、物理現象からデータ処理、その後の統計解析まで、実験全体を一貫してシミュレーションできる仕組みを目指していました。
例えば、検出器の設計を変更した場合に、どれだけ観測感度が向上するのか。新たな発見を得るためには、どれくらいの期間、実験を続ける必要があるのか。
そうした問いに対して、シミュレーションを通じて検討できるようにすることです。
実際には、特定の研究目的に合わせて検出器を最適化するためのソフトウェアを開発していました。
研究から産業設計へ。そしてTektomeとの出会い
素粒子物理学の研究から、産業分野へ進んだのはなぜですか?
研究成果をオンラインで公開していたところ、とあるスタートアップから連絡をもらいました。
私の研究に興味を持ってくれたことがきっかけで、初期の研究メンバーの一人として入社し、それまで取り組んできた最適化の手法を産業設計に応用するようになりました。
研究対象は変わりましたが、取り組んでいることの本質はそれほど変わっていなかったと思います。
複雑なシステムを理解し、より良い設計を見つける。そのためにソフトウェアやAIを活用するという点では、共通していました。
Tektomeには、どのように出会ったのでしょうか?
このスタートアップで働くなかで、次のキャリアについて考えるようになり、興味のある企業をいくつか探していました。
その中にIncubitとTektomeがあり、直接メールで履歴書を送りました。
すると弊社代表の北村からすぐに返信があり、その後、別のメンバーからも連絡をもらいました。それがTektomeに入社するきっかけです。
入社後、どのような変化がありましたか?
AI Research Engineerとして入社しましたが、それまでの研究職と比べると、ソフトウェアエンジニアリングに求められることが大きく異なりました。
研究論文のためにコードを書くことと、お客様が実際に利用するソフトウェアを開発することは、まったく違います。
実際の製品では、信頼性や拡張性が非常に重要です。研究では十分だったコードも、製品として提供するためには別の水準が求められます。
そうした違いを埋めるために、自分で実際にソフトウェアをつくりながら学んでいきました。
アイデアの提案から製品開発まで、エンジニアが一貫して担う
Tektomeの開発環境には、どのような特徴がありますか?
Tektomeには「Forge」と呼ばれる独自の開発サイクルがあります。
3週間は開発に集中し、その後の1週間は少しペースを落として、休息や学習、新しいアイデアの試作などに時間を使います。
また、役職や経験年数に関係なく、誰でも新しいアイデアを提案できます。
そして、提案したアイデアを実際に進めることになれば、ユーザーとの対話から設計、開発、テスト、デプロイまで、一貫して担当します。
プロジェクトマネージャーやデザイナー、QA担当者がそれぞれの工程を引き継ぐのではなく、エンジニア自身が最初から最後まで責任を持つ形です。
Tektomeでは、これを「全員がプロダクトエンジニアである」と表現しています。
そうした働き方のどのようなところに魅力を感じていますか?
自分でアイデアを提案し、それを実際の製品として形にできるところです。
誰かから仕事を割り当てられるのを待つのではなく、自分が必要だと考えたことに主体的に取り組めます。
ユーザーが抱えている課題を理解し、解決方法を考え、実際に開発して届けるところまで関われることに、大きなやりがいを感じています。
また、エンジニアを信頼し、仕事の進め方を任せてもらえることも、この環境の魅力だと思います。
AIが進化する中で、建設業界にできること
なぜ建築・建設業界に関心を持ったのでしょうか? 現在はどのようなことに取り組んでいますか?
現在、日本では政府の後押しもあり、さまざまな産業でデジタルトランスフォーメーションが進んでいます。
建築・建設業界は日本の主要産業の一つなので、デジタル化やAI活用が進んでいくのは自然な流れだと思います。
ただ、私が大切にしているのは、既存の仕事をAIで置き換えるという考え方ではありません。
まず業界がどのような課題を抱えているのかを理解し、それに対してどのような技術やツールを提供できるのかを考えることです。
Tektomeで開発しているのは、非常に柔軟性の高いプラットフォームです。
企業ごとに抱えている課題は異なるため、すべての企業に同じツールを提供するのではなく、それぞれが自社の課題に合わせた専用アプリケーションを構築できるようにすることを目指しています。
今後のAIの進化について、特に期待していることは何ですか?
AIの普及は、それ自体が次の進化を加速させているところが興味深いと思います。
AIを利用する人が増え、そのAIを使って新しいAI製品が開発される。そうした循環によって、技術の進化がさらに速くなっています。
実際、大規模言語モデルを開発している企業自身も、次世代のモデルを開発するために、自社のAIを活用しています。
今では、つくりたいものについて大まかな目標を伝えるだけで、AIが最初の形をつくってくれるようになりました。
AIを使って新しい技術を開発し、その技術がさらに次の開発を支援する。こうした変化が、今後どのように広がっていくのか、とても楽しみにしています。
Tektomeで、建設業界の新しい可能性に挑戦する
Tektomeでは、建設業界の専門知識とAIをはじめとするテクノロジーを組み合わせ、業界の課題解決に取り組むメンバーを募集しています。
Gilesのように、これまで培ってきた研究や技術開発の経験を新しい領域で活かしたい方、自らアイデアを提案し、製品づくりに主体的に関わりたい方は、ぜひ募集中のポジションをご覧ください。
